「う……」
 目を開けると薄青暗くて見慣れた自室が視界に広がる。
 厳しい寒さ、からからに乾いた風がガタガタと窓を頑張って揺らしている。
 それを応援する気分にはとてもなれず、布団から出ている部分を冷気にひやりと撫ぜられて首をすくめた。裾を中に取り込み、温かい空気が逃げてしまわないようにすっぽりと収まる。
 あー、寒い。
 ぬくぬくと温かい布団は本当に気持ちいい。どうにか寝返りをうって時計を見てみればまだ起床までは三十分ほど時間があるか。
「……」
 末端からじんわり冷えていくのを感じて身体を縮こまらせてみる。体温で温もった部分に冷えた肌が触れ、自分のモノだというのにその温度が愛しかった。
 あー、寒い。眠い。
  起きなければいけないとわかっているけれど、このままではもう一度寝てしまう。寒いし温かいし眠いし。身体がなかなか動かせない。
「…体温上がらん…」
 任務の時は完全に眠ることもない身体、しかしここはかろうじて平和な里の中だ。敵の気配を感じればすぐさま覚醒するだろうがそんなものがあるはずもなくて。
 体温上げないと。
 眠気で濁った頭はぼんやりとそんなことを考え、する、と身体に手を這わせた。
 なぞるように指を動かせばやがて股間に辿り着く。
「ん」
 起き抜けでゆるく硬度を持つものを撫でればじんわり身体に染みる快感。都合のいいように自分で弄りながら、ああそう言えば久々だなぁとどこかで思った。抱き合う相手がいる今は別に自慰をする必要がなかったからだ。長期任務の時はともかく。直に触れ、快感が増すとともに身体へ熱が灯るのを認める。どくどくと動悸が速くなる。寒かったはずの身体、布団の中が熱いと思うほどに熱気を含む。
「は……、ん、ふ…く」
 確かな音として生まれない掠れた荒い息。それを滑稽だと思いながら白濁を吐き出した。
 とりあえずティッシュを取って拭うと、身体が熱いうちに思い切って布団を引っぺがす。ばばば、と服を脱ぎ、急いで忍服を着込みながら何気なくドアに目を向ければ。

「なななななななな何見てんですかーーーーーッ!」
「すいませんごめんなさい悪気はないんですおはようございますー!」
「あ、おはようございます」
「いえ」

 ぺこり。

 真っ赤な顔で痴話喧嘩まで残り五秒、とりあえず平和な朝だった。






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200401


イベントペーパー小話。
いやもう書いてて楽しかったのをまだ覚えています。