※学生カカシ×女イルカ先生です。

 

 

 

 

 


 好きな人がいます。

 好きな人がいます。
 多分、始めて好きになった人です。
 多分、たまたま。

 その人は、『先生』 でした。


 昼休みを告げる鐘が鳴る。

「あー……もう行かないとねぇ」

 飲んでいたカフェオレのカップをくしゃりと握りつぶし、少し離れたゴミ箱に放り投げればすとんと入る。もう慣れてしまった行為だけれど、ナイス、と目配せしてくる食堂のマスターに目配せを返してから目的地へ向かって歩き出した。
 手にはいっぱいの菓子パンを持って。

 最近の俺の一日、そのなかで一番大切な時間。

 はやる心と裏腹にのんびりと進む横を、飢えた学生服の群が通り過ぎていく。急がないと本日の定食はすぐになくなってしまうんだから当然だ。
 人の流れとは逆に廊下を進み、渡り廊下を通り過ぎ、向かった先は独特の匂いと静かな空気で満ちた人気のない理科棟。目的地は3階の一番奥、生物実験室の手前、教官控え室とかそんな名前の場所。

「こーんにーちわー」
「…はたけ?」

 勝手知ったるなんとやら。誰もいない準備室を通り抜けて奥のドアへ。
 案の定一人きりで、ちょうど白衣を脱ごうとしている先生と目が合う。

「お昼食べに来ました〜あ、ついでに質問もね」
「お前最初は質問のついでに面倒くさいからここで飯食うっていってなかったか…まぁ、いいけど。ほら見てやるからあっちの椅子ひいてきな、コーヒーは?」
「砂糖は多めでお願いしますねー」

 それはセルフサービスだ馬鹿もん、と通り過ぎざまに言い捨てられながら白衣を渡される。ハンガーに掛けておけ、と言う意味だ。
 変なところできっちりしてるのか神経質なのか、イルカ先生は休憩時間には白衣を脱ぐ。胸ポケットのところに変な細胞が悪趣味なぐらいに細かく刺繍されているそれを、大学の頃から使っていると聴いたのはいつだったっけ。クリーニングに出すとついてくる青いワイヤーのハンガーをロッカーから取り出しながら考える。そうでもしないとおかしくなるから。
 俺はとっくにおかしいのかもしれないけれど。

 なんとかここまでこじつけた言葉の入らない関係に酷く暖かい感情と、同じだけ冷たい感情が心によぎる。

 薬缶を火にかけに行った先生からこっちは見えないから。
 ちょっとだけ、白衣を抱きしめて顔を埋めた。

 馬鹿みたいな行為に涙が出そうになる。


 好きです、せんせい。


 好きな人がいます。

 たまたま、先生です。




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20061231


この後自宅で匂いを反芻して自慰に耽るに決まってるだって思春期だもの<酷。
昔書いた話のリサイクルですが、続きが書けたらいいな。