※オフ本「青い鳥」設定です(年下カカシ×女イルカ) ※二人のこどもがモズクという男の子です ※いやまぁそれだけの話なんですが。 ※作中では幼かったけど10歳前後ぐらいで<それも幼い 「あら」 見慣れた銀髪を見つけたと思ったのに視界のだいぶ下側にそれを認めて、紅は思わず声を出してしまった。特に大きいわけでもないその声を聞きつけたのかこちらをみる子供はやはり忍びの端くれということだろうか。 「こんにちは。紅さん、おひさしぶりです」 「こんにちは。モズクはおつかい?」 ぺこん、とかわいらしくお辞儀をした銀髪は父親のものとそっくりだ。ちょっと前まで女の子かと見紛うばかりだった容姿は「きれいなおとこのこ」に近くなっている。 月日が経つのははやいものだ、と紅は横に並んで商店街を進んだ。 「かーちゃんが今日は遅くなるんで、特売の買っとけって。それに、」 「あぁ、カカシが帰ってくるものね」 今朝帰還の知らせがあったのを知っている。 口にしたとたん、ちょっと頬を染めて子供特有の笑顔でモズクが笑ったので思わず瞠目してしまった。手にいろいろとチェックの入っている特売チラシを握りしめているのも何のその、うん、とおさない口調はかわいらしいもの。 あらまぁ、かわんないこと。 父子の仲の良さはイルカから伝え聞いているが、実際に見てみるとなんだか不思議な気がする。 「…そういう顔も親にそっくり。よく言われるんじゃない?」 「上忍のひとには、カカシが天使になった、すごいもの見た、って言われます」 「あはは!まーね、モズクはカカシよりハンサムよ?私が保証するわ」 ありがとうございます、とモズクが笑った。 このあたりの素直さというか対応の仕方が年齢離れしていてすこし末恐ろしくもある。 「アカデミーでもてるんじゃないの?告白の一つや二つされてんでしょ」 うりうり、と肘の先でつついてやるとえええ、そんなこと、とやんわり逃げる。 そんなこと聞き出したらもうトシだぞババぁだぞ、とどこかの髭熊の声が脳裏をすぎていったが無視しておいた。もてるのはイルカから聞かされているしカカシさんの息子ですからね、と当然のように母は屈託なく笑っていたのだが、本人を前にして聞かずにいられないのはオンナの性なのかなんなのか。 「そんなの、今は考えられないですもん!今は友達と遊ぶのとアカデミーと修行でいっぱいいっぱいだし、カノジョとかいてもなにすんだか全然わかんないですし」 父親の血がなせる技かモズクの成績は上々だが、突出した天才肌かと言われるとそうではないらしい。忍びとして上等な男になるのだろうが、そこは親の教育方針なのだろうか。 自分には息子がいないからよくわからないけれど。 「ふーん…でもこんな子がいい、とかはないの?あるでしょ、理想っていうか」 「理想ですか?えーと」 少しだけ考えるそぶりをモズクは見せた。 しかしそれは答えを捜すというよりもとっくに決まっている答えを口にするのを渋っているようにも見える。真相はモズク自身しかわからないことだ。 「カカシさんより綺麗で、かーちゃんよりかわいいひとがいいです」 輝くような笑顔でいう台詞がこれだからたまらない。 あっはっは、と人目憚らずに紅は身を二つに折って笑った。モズクはきょとんと爆笑する紅を見ている。 「いいわモズクあんたサイコー!なかなか難しい条件だけど、ま、そのうちきっと会えるわよ それはこの子の両親たちのように、自分と相手のように。 確かなものでないくせに絶対に、己の対がいる。 ぽふ、と頭に手をのせれば柔らかい銀糸に埋まる。 さっき買った食料の中から菓子をひとつ手に握らせてやって、ぱちりとウインクひとつ。 「ありがとうございます」 またぺこんと頭を下げたモズクに手を振って、角を曲がる。 あげた菓子はフリーズドライのいちごをホワイトチョコでくるんだもので、イルカの好物でもある。きっとすこしイルカに残しておいて、あわてて帰ってきたイルカはそれをつまみながらカカシと息子のための料理を作るんだろう。 さよなら、また! まだ高い声が背中にかかり、もう一度振り向かないままに手を振った。あたたかな暖色、風は冷たいのに視界はあたたかさでいっぱいだ。夕暮れが満ちる。 カサリとビニル袋が音を立てる。晩酌用の酒、瓶がぶつかる硬質な音。 モズクと同じ気持ちでした買い物を持つ。そうして紅は我が家を目指して足早に歩いた。 何時間か後にはすくなくともふたつの家でしあわせな夕食だ。
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