ぐしゃ、と大きな手のひらに髪をかき混ぜられてもランボは上体を机に倒したまま動かなかった。 昔もじゃもじゃだった黒髪は今では小洒落たガキらしくいつも丁寧に整えてあるけれど、この人の前ではもじゃもじゃでいいと思っている。 「ランチアぁ」 「ミルクはまだあるぞ」 自覚している甘ったるい声に返されるのは出会った頃と変わらない落ち着いた反応で、ランボはふうと息をついた。 「……ぜったいイーピンってヒバリ・キョーヤを好き過ぎだよね」 「そうだな」 「あんなしあわせそうな顔しちゃってさ」 「あぁ」 最近やたらとオンナノコ、になってしまった幼馴染みについて、なんだかランチアに愚痴るのが恒例になってしまっている。 こんな風に、幼馴染みにいらいらするのもどきどきするのも、すべてが一瞬づつのことなんだからタチが悪いことこのうえない。 なんだかなぁ、と淹れてもらったホットミルクを味わって、そのままテーブルに置かれたランチアの手の甲へ額をのせた。 「ランチアぁー」 「ん」 「しんどい…」 「そうだな」 低い体温が心地良い。 ぬるみが身体へ広がるのを享受しながら、ランボはこころの中だけでつぶやいた。 ねぇランチア、あのイーピンのきらきらした感情も、オレのしんどさも、おそらく恋とかいうのだと思うんだけど。 それを俺たちからほんの少しづつだけど確かに、あなたにも差し出しているんだと知ってる? 温くなったホットミルクは甘さがべたつく。 舌を幾度も口内に擦り付くけながら、ランボは想い人かもしれない脳内の幼馴染みに笑いかけた。 ねぇかわいいひと、オレ達はほんとにステキで笑っちゃう恋をしている。
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