あたたかさと肌の匂いがこもった布団の中に、無粋な空気が入り込んできてイルカは目が覚めた。 「……さぶい」 「そりゃ寒くしてんだから当たり前でしょ。起きた?」 ぐしぐしと目元を擦ってから視線を上げれば、襟足を掻いてあくびしながらカカシが見下ろしている。続く動作で時計を見て、一度イルカもあくびして、そうしてがばりと身を起こした。今日は早出だ。 「おはようございます」 「おはよーです。とっとと飯食いましょ、食ったら俺二度寝するから」 「寝てないんですか?」 「まさか。起きたのはさっきですよ」 明日は早いから、と夜の誘いを断ったのに言うことを聞かないカカシは「じゃあ起こしてあげるから夜更かししましょ」と笑った。そんな笑顔でも好きだなぁと思ってしまうあたりイルカが敗者なのは最初からわかりきっていることだ。 お互いのために一回だけ。 「んー」 背伸びをすればばきばき節が鳴る。 ぐしゃぐしゃと髪の毛をカカシがかき混ぜてくるのをそのままにして、ふと横を見ればなんとも言えない位置にまぁおなじみのものがぶら下がっていた。 それより目についたのはそのまわりで。 そーいやこのひとうつぶせ寝だよな、たまに。 「カカシさん」 「ん?あれ、せんせ俺のぱんつ布団の中?」 「あー多分そうですけど…寝癖付いてます」 そう言われてカカシは自分の銀糸をかき混ぜた。柔らかなようで固いくせ毛にも寝癖はもちろんついている、でもそうでなくて。 「いや、そっちもですけど。こっち、上向いちゃってる」 そう言ってイルカは何の気なしに普段とは正反対の方向を向いてしまっている一房をつまんで引いた。 「ぎゃーーーー!」 「あ、すいませんいたかったですか」 「いや別に痛くはなかったけど!なかったけどあんた朝っぱらからッ」 痛くないとは言いながらカカシが涙目で股間を手で隠したのでなんだかいじめてしまったような気がしてくる。 「カカシさんもいつまでも裸族だと風邪引きますよ?もう朝晩寒いんですから。あ、あったあった、はいパンツ」 「あんた時々とんでもないことしますよねぇ…」 「そうですか?そんなのカカシさんにはかないませんよ。ほら早く履いてください」 「…、おれはちびっこじゃないです!一人で履けますから!」 穴に足を通しやすいように両手で広げて待っていれば、顔を赤くしたカカシに下着を引ったくられる。 あらら、と傷の端っこを掻いてイルカは苦笑した。 「とりあえず飯食いましょうか。魚焼きますよ」 「はーい」 「下の方はどうでもいいけど上の寝癖は直してから任務に行ってくださいね」 「…はーい」 部屋着に首を通そうとしているカカシの銀髪を、覗いている分だけ手櫛で梳いてやる。 それからイルカは朝食を準備するべく台所へ足を向けた。 早出の自分と、寝直すカカシのためにあたたかな食事を作らなければ。
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