カカシ先生の機嫌が悪い。 「カカシせんせー」 「……」 「おーい」 どうせまた自己嫌悪でいっぱいなんだ。 これだから真面目系は困る。しかも変なところで鈍感だ。 それとも、俺の声が小さすぎるのか。 基礎体力は俺のが上だと思いたいけれど相手は上忍で ねぇかかしせんせい 「カカシ先生」 「はい…」 ベッドの上から動かない、動けない俺(だって腰とか他いろんなところが痛いしあらゆる意味で精も根もつきはてた)からは居間に置いたソファーからのびるカカシ先生の白い足しか見えない。長いからはみ出してるんだ。自分の方が短期とはいえランクの高い任務後で疲れているだろうに、そんなとこで寝て。 俺は別に横に寝てくれて全然かまわないのに、あわす顔がないとか考えてるんだろう。だから真面目だってんだ。 「気持ち的にしんどいんだったら次から選んで下さい。 1:俺はあなたに任務を受けたことにする 2:あなたがいいと思うぐらいの代金を俺に払う 3:明日の晩俺と飲みにいって奢る 4:なかったことにする ハイどれ?」 最初と今の状況はどうあれ最中は気持ちよかったから俺が金払ってもいいんだけど、それじゃ余計納得しねぇんだろうなぁ。 そんなことを考えながら仰向けになり、天井の木目をなんとなく数える。素早く答えが返されることがないのと、それでも帰ってくる答えがいつも同じであることを俺は経験で知っているのだ。 カカシ先生の中で俺はどういう人間なんだろう。 任務後に襲っちゃったり誘っちゃったりする知り合い。 普段はそんなに会話もない教師仲間。 文句も言わずただ寝ている相手。 そんな、俺をどう思っているんだろう。 …たぶん変なやつだと思ってるんだろうなぁ。 俺を利用している自分がいやで、セックスでくろいものを浄化している自分がいやで、くろいものを耐えられない自分がしのびとしていや。 カカシさんのまわりにはいつも「自分がいや」がふわふわ浮いている。 だからだと思う。 たとえ自身が嫌だと思っていても、俺は、まぁ、その。 そういうことだ。 そしてカカシ先生はちいさなこえでさんばん、と呟く。 いつかどうにかこの関係は変わるのかもしれないし変わらないのかもしれない。一番最初に同じ提案をしたとき、金で解決はいやですねおごりでも一緒なのになんでだろう、そう言って何秒かだけ屈託なく二人で笑った。その瞬間の笑顔は本物だったと思うのだ。 俺はもっとあれをみたい。 見たいから、なかったことにするという選択肢を選ばない真面目で鈍いひとを受け入れ続けているんだ。 まだ夜明けは遠い。 暖房を付けているから平気かな。 カカシ先生が風邪を引かないかすこしだけ心配して俺は瞼を閉じた。 明日もきっと変わらない毎日だ。 俺が寝ないとカカシ先生が帰れないのを知っているので、それではおやすみなさい。
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